天国への道2

🌸4世代10人ドタバタ国際家族が幸せな家庭をめざしてどう生きるか? 日々のエピソードや所感を勝手気ままに書き散らかしていきます🌸

いまを生きよ! いまを生き切れ!

四月中旬から五月の連休にかけて、
私は、3人の友人や知人を病気で失いました。
御花入れをしてあげて旅立ちを見送りました。


50代60代の若さで家族を残して逝ってしまったのです。


しかし、不思議なことに彼らは家族や私たちに
絶望や悲しみを残しませんでした。


医者から「もう長くは生きられない」死の宣告を受けても
最後まで死中に活を見い出していました。
闘病生活と命が燃え尽きるまでの生き様は
悲しみや絶望ではなかったのです。


天を愛するがゆえに・・・
慈しみや愛、生に対する勇気と希望
彼らは家族や多くの人たちに残して逝かれました。



実は、2年前に私は・・・


死の宣告を受けた田坂広志教授の手記に出会い、
その時、死を乗り越えていく彼の生き方に心打たれました。


彼は言います。
「病とは福音なり」という言葉がありますが、
病気になることは一見不運なことのようで、
実は幸運の兆しでもあると、
人生の深い真理を教える言葉です。
どれほどの危機も逆境も、我々の覚悟次第で、
好機に転じることができるのです。
死中に活を見出すことができるのです』


ここでその手記(2021年)「致知」より抜粋して紹介します。

いまから38年前、32歳のとき、私は重い病を患わずらい、

医者から「もう長くは生きられない」との宣告を受けました。

                                                     医者から見放され、自分の命が刻々失われていく恐怖と絶望の日々、

両親は私に、ある禅寺に行くことを勧めました。

                                                       藁わらをも掴つかむ思いで、その寺に行きましたが、

そこには何かの不思議な治療法があるのではとの期待は、

すぐに打ち砕かれました。

                                                      寺を訪れると農具を渡され、

ただひたすら畑仕事で献労をすることが求められたのです。

                                                          明日の命も知れぬ自分が、

なぜこんな農作業をやらなければならないのか。

そう思いながら鍬くわを振り下ろしていると、不意に横から

「どんどん良くなる! どんどん良くなる!」                                      と叫ぶ声が聞こえてきました。

                                                      見ると一人の男性が懸命に鍬を振り下ろしている。

しかし、その足は大きく腫はれ上がり、

ひと目で腎臓を患っていることが分かりました。

                                                       休憩時間に声を掛けると、その男性は言いました。

「もう10年、病院を出たり入ったりですわ。

一向に良くならんのです。

このままじゃ家族が駄目になる。

自分で治すしかないんです!」

その覚悟の言葉が胸に突き刺さってきました。

                                                         そして、その瞬間、一つの思いが湧わき上がってきました。

「そうだ、自分で治すしかないんだ!」

                                                       それまで自分は、医者が治してくれないか、

この寺が何とかしてくれないかと、常に他者頼みであり、

自分の中に眠る無限の生命力を信じていませんでした。

それが最初の気づきでした。

                                                        それから数日後、山の中腹の畑を耕しに行くことになりました。

当番になった私が仲間に農具を配り終え、

先に出発した仲間を追って山道を登り始めると、

思わず言葉を失う光景を目にしました。

                                                        それは、足を患っている献労仲間の老女が、

鍬を杖つえにして、山道を必死に登っていく姿でした。

農作業はおろか、歩くことすら困難なのに、

不自由な足で、鍬にすがりながら、山道を登っている。

                                                         しかし、その後姿から、その老女の覚悟の声が聞こえてきました。

「たとえ畑に辿たどり着けなくとも良い! 

私は全身全霊、この命を振り絞って登り続けます!」

                                                          私は思わず心の中で手を合わせ、

「有り難うございます。大切なことを教えて頂きました」

と念じながら、横を通り過ぎていきました。

                                                       その献労の日々を続け、寺の禅師との接見がかなったのは、

ようやく九日目の夜でした。

長い廊下を渡って部屋に入り、一対一で向き合った禅師は、

力に満ちた声で私に聞きました。

                                                                「どうなさった」

「はい、実は・・・」

私は堰を切ったように苦しい胸の内を吐き出しました。

重い病気を患っていること、医者からもう命は長くないと言われたこと、

一縷の望みを抱いてこの寺へやってきたこと・・・。

禅師はきっと、何か励ます言葉を掛けてくれるに違いない。

そう期待しながら語りました。

                                                      私の話を聞き終えて、しばしの沈黙の後、

禅師は言いました。

「そうか、もう命は長くないのか」

「はい・・・」

                                                        その後、禅師は腹に響く声で力強く、こう言ったのです。

「だがな、一つだけ言っておく。                                         人間、死ぬまで命はあるんだよ!

過去はない。未来もない。                                                有るのは永遠に続くいまだけだ。

いまを生きよ! 今を生き切れ!」


田坂広志(たさか・ひろし)
多摩大学大学院名誉教授、田坂塾塾長
昭和26年生まれ。56年東京大学大学院修了。工学博士。
12年多摩大学大学院教授に就任。23年内閣官房参与に就任。
25年全国から7,000名の経営者が集う田坂塾を開塾。
著書90冊余。
近著に『すべては導かれている』(小学館)
『運気を磨く』『運気を引き寄せるリーダー 七つの心得』
『人間を磨く』(いずれも光文社新書)など。


参考:
・致知(致知出版社)